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願い事

たまたま停車した駅の側にあった露天に置いてあったペンダントは、最近巷で話題の「持っているだけで願いが叶う」という、そんな噂が纏わるものだったようで、

「へえ…見た目は普通なのにね。でもだからって、買う?」
「だあってえ…でも見て、ミオちゃん。ほらこのキラキラ、可愛い!」

可愛いものには目がないカグラの、この有無をいわさない衝動買いに、しっかり者のミオは呆れたような表情をしている。

でも本当はミオだって、ファンシーなぬいぐるみは好きみたいだし、
あんな風には言っているけど、まあ買いはしなくても少しは気になってはいるんじゃないのかなあ?…二人から少し離れた座席に座ってた僕は、本を読んでいる風に見せかけつつ、二人を眺めながらそんなことを思っていた。

そうこうしている内に、カグラは「見てみて、ヒカリ!」と、今度は別の座席に座っているヒカリの元へと寄っていった。
新品のおもちゃや洋服を買うと、誰彼構わず見せては誉めてもらいたい。カグラの行動はそれに近いものがあるんじゃないか。
「やれやれ」という表情のミオを片目の隅に捉えつつ、僕は再びそんなカグラと、今度はヒカリの様子を伺った。

ヒカリは、不必要には誰かと一緒に盛り上がったりはしないし、そして僕たちの中では一番論理的かつ現実的。
そんなヒカリに、「持っているだけで願いが叶う」らしき石を見せて、一体どうしようと言うんだろう。
いやきっと、カグラはそう言うことは深く考えているわけじゃなくて、
ただ純粋に、人に見せたい、教えたい、っていう感じなんだろう。
そんな、天真爛漫とでも言うべくカグラの一面を、僕は時々羨ましく思う時がある。


「ねえねえ、ヒカリ。見てみて!これ可愛いでしょう?」
そんなカグラは、ヒカリの隣に座り、先ほどのミオにしたのと同じように、ペンダント見せていた。
ヒカリはそんなカグラを一瞥するも、特にペースを崩さずにいつも通り、手にした剣玉をいじっていた。
とはいえ、一応はカグラの問いには答える気はあるようで、

「何、それ」
「これね、持っているだけで願いが叶うっていうペンダントなんだって!さっき降りた駅の側にあったお店で買ったんだよ!」
「あのさあ、本当にそんなものあると思うの?だいたいそれが本物なら、そんな露天で誰でも手頃に買えるわけないでしょ」

まさに正論かつ、論理的。
ヒカリは剣玉から視線を動かすことなく、カグラにそう言った。
カグラはそんなヒカリに対して、「そんなことないよ」と説得力の無い反論を一応はした上で、

「色んなところを巡り巡って、あのお店に来たかもしれないじゃない」
「ふーん…じゃあさ、本当に叶うかどうか、試してみようよ。カグラは、何を叶えたいの?」
「えっ…あ、まだ考えてなかった」

と、そういうグッズを買っては見たものの、
グッズの効果よりも明らかに見た目に魅かれたというのがここで露呈したカグラは、
ヒカリにそう聞かれて言葉に詰まっていた。
でも、

「でもね、でもね…そうだ!」
「…あのさ、願い事って思いついて願うものじゃないと思うんだけど」
「お、思いつきじゃないよ!」

カグラはそう言って、何故かきょろきょろと辺りを見回していた。
とそこに、ライトが両手一杯の食べ物を抱えて外出から戻ってきた。

食べるのが大好きかつ食欲旺盛なライトは、度々、外出した時にこうやって大量の食べ物を買い込んでは、レッシャ―の中で幸せそうに食べている。ほぼ、誰に分けることもなく。いや、たまに分けてはくれるけど、あくまで味見程度。
ミオに良く「食べ過ぎ!」って怒られても、懲りずに食べていて。
今日も、僕の目の隅に映っているミオが、戻ってきたライトを「おやつを大量に買い込んではこっそり食べようとしている子供を今にも怒り出しそうな母親」のような目で見ている。

「…」
…カグラはそんなライトを見て何か閃いたようで、パアッと顔を輝かせながらヒカリに向かってこう言った。

「じゃあね…ライトがおなか一杯美味しいものを食べることが出来ますように!」

が、

「両手いっぱいの食べ物を食べれば、誰でもおなか一杯になるでしょ?しかも自分で買って来たんだから、美味しいに決まってるし」
もし僕が相手だったとしても、恐らくそう突っ込んだであろう言葉を、ヒカリがカグラに向かって言った。
カグラは「そっか〜」と一瞬しょげたものの、今度は僕とミオの方を見て、
「じゃあね、ミオちゃんとトカッチがもっともっと仲良くなりますように!」
と、そう言った。

え、何それ。僕的には嬉しいけど、カグラ、それどういう意味?

カグラの閃いた…というか口にした願い事に、僕は耳を立てながらもドキリとする。
ミオにはカグラの声は聞こえていなかったみたいだけど、
カグラにしてみたら、あれかな。僕とミオは勿論仲が良いけど、それ以上に、その…って思ってくれているのかな。
僕はカグラの願を聞いて、様子を窺っているのがばれない程度に一人にやにやとしている。
ところが、

「そんなの、カグラが願わなくたって、あの二人次第でどうにでもなることでしょ」
「そっかー」

さっきのライトに関する願いよりもドライにバッサリと切り捨てたヒカリに対し、カグラもあっさりとそれを認め納得していた。
僕は思わずがくん、と首を垂れるも、
まあ確かに…うん、他人に願われることでもないなあ、とは僕も思っては、いる。

こればっかりは相手があることだしなあ…僕はそんなことを思いながら、チラリと目の隅に映っているはずのミオに目をやると、ミオは既にその場所にはおらず、

「だから、ライトそれ買いすぎ!おなか痛くなるよ!?」
「大丈夫だって!」

やっぱり先程僕が予想した通り、「おやつを大量に買い込んではこっそり食べようとしている子供を今にも怒り出しそうな母親」基、人一倍面倒見の良い学級委員が如く、ミオはライトとそんなやりとりをしていた。

僕もボーっとしていたりすると、ミオに「ちょっとトカッチ!」って、良く怒られるし。
まずはその回数を減らさないとなあ。先に進むのは、多分それから。じゃないと、なあ。
僕はそんなことを思いつつ、そっとため息をつく。





そうこうしている内に、カグラは再びヒカリに願い事を伝えていた。

「うーん…それじゃあねえ…」
「ねえ、だから。願い事って、捻り出すようなものじゃないでしょ。自然に願うこと、ないの?」
「自然…あ!じゃあね、ヒカリといつまでも一緒に居られますように!」
「叶うことが決まっていること願ったら、勿体ないじゃん。他は?」
「そっかー。あ!じゃあこれは!?皆で皆の街に帰ることが出来ますように!」
「…そうだな、それなら、いいかもな。でもその為には、こっちもみんなで努力しないとね」
「うん!」

二人はそこで落ち着いたのか、ペンダントの話はそこで終了し、何か別の話を楽しそうに始めていた。
僕も最初は、「ああ、願い事が決まって良かったね」なんて思って二人の観察をそこで終了しようとした。
でも。



…ん?


二人の会話をよくよく思い出してみると、どうも途中が…うん、何かおかしいぞ?ということに気が付く。


さっきカグラが、「ヒカリといつまでも一緒に居たい」って願い事を言ったと思うんだ。
それに対してヒカリは確か…?

……
…………


「…」
叶うことが決まっている願い、かあ。
しかもそれをさらっと受け入れちゃう、カグラ。


当の二人はもう別の話題で、独特の空気感の中話を始めているし、
このことを誰かに話そうにも、ミオとライトはまだ食べ物の事でヤイヤイやっているし。


「…」
仕方ない、来たるべき時が来るまで、これは僕だけの秘密にしておこう。


でも、二人のそういう関係、なんかちょっと、羨ましい。
僕は読んでいる本の隙間からヒカリとカグラの姿を眺めつつ、そんなことを思っていた。
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